2025.07.02 UPDATE
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フクモリシン

ラグビー精神に学ぶ

 

ラグビーの発祥は1823年、イングランドのラグビー校においてウィリアム・ウェブ・エリスがフットボール(サッカー)の試合中にボールを拾い上げ手に持ち走り出した、という伝説から始まったとされている。日本には1874年にラグビーが伝わり、1899年に慶応義塾大学にラグビー部が創設され、大学ラグビーから社会人ラグビーに発展し、2003年からトップリーグとして日本プロラグビーチームが発足した。ラグビーブームは何といっても2015年のワールドカップから始まった。過去24年間、ワールドカップで勝ち星のなかった日本が過去2度の優勝を誇る南アフリカを34—32で破る大金星を挙げたのだ。そして、2019年に日本でラグビーワールドカップが開催され、開催国としても最大に盛り上がりをみせ、私のラグビー経験者としての魂が蘇り、試合を録画してよく見るようになった。

思えば、50年も昔の話。高校時代はヤンチャだったので問題を起こして学校に留まることが難しいこともあったが、高校を辞めずにいられたのもラグビーのおかげだ。そして、日体大ラグビー部で本気でラグビーをしていた、いやラグビーしかしていなかった若い頃の寮生活や練習の思い出が少し懐かしく思い出される。高校、大学、そしてクラブチームでのキャプテンの経験が今の仕事に繋がっていると回顧することが多くなった。自分の人生とは切っても切り離せない関係なのだと、この歳になってつくづく思う。

One for all, All for one―「ひとりはみんなのために、みんなはひとつの目標のために」は有名な言葉だ。ビジネス組織論とラグビーの戦略には相関性があるとよく言われている。組織(チーム)という観点で言うなら、ラグビーは15のポジションがある。それぞれに役割が違うから自分の活躍できるポジションが必ずある。ラグビーを勧められた時、私は体が小さいからラグビーは無理だと思っていたのだが、憧れの日本代表のスクラムハーフは、身長160センチの早稲田大学出身の宿沢選手だった。小さくてもこんな選手になりたいと憧れて入部した。大きな選手は200センチを超える選手もいる。そんな選手と体をぶつけ合うのだから不公平ということもあるが、逆に小回りが効く小さい選手も大事になる。個性に応じてポジションが分かれ、言い換えれば適材適所その人なりの役割が与えられ、誰が優れている、劣っているではなく、違った個性としてどのポジションも重要という特性のある競技だ。自分一人で頑張ろうと思ってもラグビーはうまくいかない。役割分担という視点になれば “そのプレーヤーの強みを最大限に生かす” という発想を元に、個々の役割の集積が柔軟で多彩なゲームメイクに繋がっていく。それぞれのポジションのプレーヤーが、このチームのために持つ力や思いが心身ともに共有できた時に、最高のラグビーができる。組織としてもすごく大事なことだと思う。

ラグビーには、自分の実力を丸裸にされながらも、体感としても等身大の自分の人間力を感じることができるという楽しさもある。人それぞれが持っている力を最大限発揮することの素晴らしさというのは、ラグビーから学べたのかもしれない。

このような経験から、名選手がいないチームが強くなる戦略について、自分流のラグビー持論がある。それは、“チャレンジ&カバー” の精神である。

ラグビーは、個人技や攻撃の技術だけでは勝てない。しかし、守備を強化すれば勝てるというものでもない。守備においてもミスは起きる。攻撃においても守備においてもカバーする選手の動きが最も大事になる。攻撃でも守備でもない、攻撃と守備の間を繋ぐプレーである。攻撃(チャンス)の時も守備(ピンチ)の時もカバーする意味において、つまりチャレンジした選手のミスをカバーするための予測するポジショニングと技術を身につけることが重要なのである。なぜなら、ミスがなければ点は入らないのだが、いくらミスしないような練習をしてもミスは無くならないのだ。ミスしたボールから点を取られるのである。つまり、接戦の場合は特に、ボールに絡むプレーヤーよりもボールを持たないプレーヤーの働きが勝敗に大きな影響を与えることになる。ボールや選手の動きの先を読む力(想像力=IDEA)を持っている選手の動きが強いチームの基盤になっている。

また、ミスしたプレーヤーはチームに助けられると次に同じミスをしないようにと自分への反省の精神が働くと同時に仲間意識が高まり、他のミスしたメンバーのカバーをしようとする。ミス(失敗)を責めるのではなくミス(失敗)を克服して生かされることで、能力や役割をそれぞれの個人が自己覚知する。自己研鑽へのモチベーションがさらに高まれば次へ進むために練習し、訓練し、努力する。結果、個人個人が実力(知識や技術)を身につけるから、ミスが少なくなり攻撃と守備のつながりができていく。

「今ここで何をすればいいのか」、チームメンバーの責任感と暗黙知の中で共有された状況判断によって名選手がいなくても強いチームが生まれるのである。

対戦相手のいる団体球技の中で最も多い15人が1チームのラグビーにおいて言えることは、“木を見て森を見る” リーダーシップとメンバーの共通意識が最も大事である。ラグビー精神には組織(チーム)の力を引き出すヒントが詰まっているのだ。チームが強くなるための条件をビジネス組織論に掛け合わせて考えてみると、リーダーの明確な目標設定、メンバーの役割理解と積極姿勢(知識、技術の習得)、良好なコミュニケーションや信頼関係が重要であることは仕事の面でも共通している。

2009年、ワールドラグビーのメンバー協会では、ラグビーが持つ人間形成に資する特徴として5つのコアバリュー「品位、情熱、結束、規律、尊敬」が示された。これらの特徴は、「World Rugby Value(ワールドラグビー・バリュー)」と呼ばれている。