
フクモリシン
人間性のある職員が組織を育てる
人はなぜ働くのか。
その意味には紛れもなく「承認欲求」が大きく存在している。働く人の承認欲求の充足と自己肯定感を獲得する過程(エンパワメント)の重要性を踏まえて、“自分の働きによって人が喜び、そして自分も喜ぶ組織のつくりかた”について考えてみた。働いたことによって承認される“人の喜び”とは、人の役に立って、助けになること。“自分の喜び”とは、人から褒められて、嬉しくて、安心して、お金がもらえること。
承認欲求が高い現代において、働く人が、如何にモチベーションを上げて仕事に取り組むことができるか、あるいはエンゲージメント(※)を高めることができるかは、事業運営の永遠の課題でもある。承認欲求という言葉はアブラハム・マズローの欲求五段階説の一つで、コミュニケーションが多様化した情報社会の現代ではその方法がシンプルではない。承認の在り方が直接の相手ではなく、不特定多数のSNSで「いいね」や「リツイート」などによってリアルな評価は得られていないにもかかわらず、自分自身が振り回されてしまう。仕事上での承認欲求には、「行動承認」と「結果承認」、つまり「過程」と「結果」による評価が重要になる。成果主義の生産業界とは違い、福祉の仕事はどちらかといえば「過程」に力点が置かれるべきだ。いやむしろ人間同士のストーリーには正解はないのだから人との関わりの過程そのものが本業であり、お互いの関係性が続く限りその関わりの過程は続くと言っても過言ではない。そこに「幸福」という大きな目標を集団で作り上げていく過程があると思う。
しかし、いくら過程が大事と言っても結果や成果が出にくい、そしていつまで続くかわからない、先の見えにくい感情労働という仕事では、達成感が感じにくい日々のルーティーンの繰り返しなので、自分自身に対峙しながらバーンアウトや「このままでいいのだろうか」と葛藤することが多くなりがちだ。働くことの意味を明確にできれば自ずとモチベーションは保つことができるのだが、長いスパンで永遠的な「働く」という概念のなかで、ましてや現代の“誘惑と思考の多様性”という情報社会の中で考えることは複雑だ。
組織全体のモチベーションのためにも働く個人のためにも、今年も去年と同じように平和であり、人間力を目覚めさせて創造的であるためには、スパンを細切れにした小さなユニークな目標を組み込んで、プロジェクトチームとして働く人が明確な役割を果たしていくことが重要だ。そして、変化する小さなプロジェクトの成功や失敗体験を長期に積み重ねていくことが、結局は大きな目標に近づいていく。中長期計画や大きな見直し、行政指導などが根幹をなすものではなく、ユニークな短期計画の繰り返し、つまり小さなプロジェクトの集りをつくり、組織はミッションの確認作業だけで十分なシンプルでわかりやすい運営構造を作る時が来たようだ。
これからの運営には、プロジェクト的発想を持つことが重要である。プロジェクトとは創造性を発揮する仕組みを構築することである。あえて組織の各グループを「プロジェクト」として機能させ運営していくという手法を目指す考え方である。ある定義では、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産(成果)を創造するために実施される有期性のある業務」とある。ここで示されるプロジェクトには「独自」「所産」「有期性」の3つの要素がある。「独自」とは“同じものがない”ということ。「所産」とは、成果であり、つまり“生み出すもの”が求められる。そして、「有期性」とは何らかの目標を達成するための“期間限定の計画”を指すものである。
プロジェクトに、今後は権限と責任を与え運営を委ねるということを目標にしながらも、一つのチームごとに、自らが考え新しいシステムを創り上げていくために、プロジェクトリーダーとスタッフが理念に沿ったビジョンを設定し、アイディアを出し、自分たちで考え、実行して、責任をとる。私たちはどんな価値を生み出そうとしているのか?その意義や理想は、プロジェクトを率いる人の問題意識に左右される。また、その問題意識こそがプロジェクトを作る動機でもある。「どうしたいのか」これがビジョンである。そこにコンセプト(構想)、つまり基本的な意図、目的や価値観、イメージが存在するのである。そして、ビジョンを実現する方法がアイディアである。求めているのは世間のスピードや競争や事例によるものではなく、自分たちの純粋な問題意識の中から「まだないもの」あるいは「失ったもの」を見つけていくような感覚が必要だ。俗に言うクリエイティブな物事を発案するには、特別な個人的な才能が必要だと思われがちだが、実は次に示した5つの視点を鍛えれば誰でもできると考える方が正しい。その実現に向けて、何をどのようにしていくのかを考えて実現するチームこそがプロジェクトである。
組織として、幸福追求実現のために一番大切なことは、言うまでもなく「人間性のある職員が組織を育てる」ことにある。そのための5つの視点を次に掲げた。
視点1 本音 オープンマインド
視点2 やる気 エンパワメント
視点3 創造性 感じるということ
視点4 信頼 人と人の相互理解
視点5 挑戦 勇気と使命感
つまり、これまでの専制型(指示型)であった法人運営のあり方を民主型に改革することである。強いリーダーシップによる危機管理やガバナンス、コンプライアンスが基盤にあることもその条件である。もはや年功序列のシステムではない。これからの人事理念は、職員を経営のパートナーと位置付け、運営する一員という感覚が持てるように、職員の意見をよく聞き、一緒に創意工夫をしながら、シナジー(相乗効果)が発揮される環境を目指したい。
自由ということを正しく理解して、我々が到達したい地点はどこか、獲得したい自分への対価や社会への対価は何か、プロジェクトの一員としての誇りが持てるようなチームをみんなでつくること。そこに当法人としての新しい風景が生まれると信じている。
(※エンゲージメント)
職員が自身の職場や仕事に対して抱く情熱や献身、コミットメントの度合いのことをいう。