2020.05.17 UP DATE
TALK SPOT 89

空即是色
潜在意識と顕在意識の間に本当のクリエイションがある

温故知新とは、過去に学ぶという表面的なことだけでなく、いかに過去と向かい合うかを考えなくてはならないことだと思う。止まることなく変化することに他ならない今を、止まった過去から創造していく。そうして初めて未来のビジョンが生まれてくる。滅びた故きをたずねて、そこに吹く風によって混沌とした新しい変化が生まれて、滅びた時代は再生する。すべては去って行き、人の心は周りとの関係で生じていて、本来的には無常であるという。常に変化し、宙に浮き一定するものが無い。常に動いている。心も体も内臓も脳も。心に生ずる真理は、ひとりひとりにあり輪廻転生などはない。これが「色即是空」(般若心経)の考え方である。変化すること。変化の結果、無常であるから滅ぶのである。生まれたものは必ず滅びると。

しかし、般若心経では「滅びる/色即是空」と逆の視点には「生まれる/空即是色」という考えが一対になっているのであり、「滅びる」ということは決して不安や悲しみの真理を説いているのではない。つまり、ある意味においては永遠に継続すべき実体がない(空)があるからこそ、瞬間的には一定の形あるもの(色)として存在する。この世の中にあるすべての存在と現象は、一瞬たりとも同じ状態にとどまることはなく、常に変化し続けるということである(諸行無常)。瞬間瞬間を大切に生きていく意味を示唆している。

内なる声と外からの声。内なる声とは,正に自分の声(空)。外からの声とは、世間の常識や情報である(色)。二つの声が一致する時は良いのだが、相反するメッセージの間に迷いや不安が生じ、人は葛藤する。計画通りにいかない、思い通りにいかないからこそ、想定外の出会いにも遭遇する。先が見えないという不安と戦うのか、先が見えないという楽しみな夢として見るのか。あらゆる存在は、常に動いていて掴みどころがないからこそエネルギーとして万物に姿を変えて生まれ変わることができる柔軟性を持っている。正に、実態のない潜在意識(空)と顕在意識(色)の間に本当のクリエイションがあるのだ。そしてそこには、アートがある。
「空」は見えないもの「色」は見えるもの
空がなければ色は存在せず、色がなければ空も存在しない。

いろいろな物質が集まって形が生まれ、そして変化していくという色即是空空即是色を繰り返しながら、自分が存在することに不安感ではなく、期待感や宇宙観を持って生きたい。今年は、障がいのある人たちから学んだ大事な基本に立ち返り、新しい色が生まれることを願う。

懸命になること。
成功をあきらめること。
緻密に計算しないこと。
変更を歓迎すること。
言い訳を考えないこと。
周りを見ないこと。
自分自身のためだけの目的をもつこと。

季刊誌95号『TALK SPOT』ページより掲載(季刊誌購読方法はこちらへ

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空即是色
潜在意識と顕在意識の間に本当のクリエイションがある
フクモリ シン