2021.10.28 UP DATE
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野間太一(WALK INN STUDIO!代表、WALK INN FES!エグゼクティブ・プロデューサー)

福森伸(しょうぶ学園統括施設長)

鹿児島の参加型音楽フェス「WALK INN FES!」を主催し、しょうぶ学園のotto&orabuとも関わりがある野間氏。福森とはPAとして技術的な面での関わりのみだったが、あたたかな思いを聞くことになる。地元である鹿児島でイベントを行う意義、音楽を通して伝えたいこと。そして既定の枠にとらわれない発想、どんな人もあるがままでいいということ。しょうぶ学園の良き理解者であり協力者とトークを奏でるひととき。

福森:野間さんにはotto&orabuのPAとして長くお世話になっていますね。

野間:しょうぶ学園と関わりがあった時にはもうWALK INN STUDIO!(音楽企画スタジオ)を経営していました。そこでグッドネイバーズジャンボリー※1)にも関わっています。鹿児島にはなにもないと思って都会に出ちゃったけど、10年して帰ってきたらマイペースにやってる人たちもいましたね。鹿児島にすごいクオリティのものがあるって見つけ出すと、心はやっぱりそっちに行くじゃないですか。おもしろいものがたくさんありました。しょうぶ学園もその中の1つです。

福森:otto&orabuは知らなかったんだよね。

野間: ジャンボリーの1回目のとき初めて聞いて、もうすごかったです。僕はああいう音楽がすごく好きなんです。しょうぶ学園にも来たことがあってアートもすごく好きだし、全部が音楽とはまってましたね。

福森:グッドネイバーで知り合ったわけなんだけど。音セッティングのやり取りばかりで個人的には全然喋ってないんだよね。遠慮してるのかと思っていました。

野間:僕はずっとotto&orabuのPAをしたかったんですよ。それで、グットネイバーズジャンボリーの2回目か3回目のときにやらしてもらったんです。

福森:嬉しいですね。それ以来数回フェスに一緒に行ってもらったりしましたね。うちとしてはPAを外部から雇うという発想はもともとなくてありがたく思っています。もともと学園の職員にも知り合いが何人かいたんだよね。

野間:4,5人いたかな。東京から来た人ともたまたま知り合いだったし。僕はPAっていう仕事をしてるんですけど、10年間東京にいて今鹿児島に帰ってきてから10年くらいかな。東京にいる時に、昔から好きだったbloodthirsty butchers※2)っていうバンドのPAとしててツアーで鹿児島に来たんです。バンドのボーカルがしょうぶ学園のことを知っててぜひ行きたいと。みんなでライブの次の日学園に来たんですよ。

福森:CDジャケットにしょうぶ学園のアートを使ってくださったバンドですね。

野間:僕の好きなバンドと、自分の田舎である鹿児島のしょうぶ学園ってものがつながったり、意外に自分の仲間がここで働いてたりしてすごく身近に感じましたね。東京では日本でトップと言われる外資系のクレア・ブラザーズ・ジャパンという大きな会社に入ったんです。ポール・マッカートニーとかストーンズのツアーを回らせてもらったんだけど、チーム感がなくて辛くて1年で辞めたんです。その次にライブハウスですね。日本で最初にやり始めた新宿ロフトっていうところに行きました。そこで出会ったHi-STANDARDのPAの方が僕の師匠で、パンクロックバンドに付くことが多かったかな。専属のバンドもできて10年くらい全国を回っていきましたね。そんな仕事をしていたこともあって鹿児島に帰って来てからは、僕自身をという一人の人間を見ないで仕事内容とか誰と仕事してきたかを見る人が多かったんですよ。大きな仕事がしたいわけでも大きなアーティストとやりたいわけでもなかったから、それがすごく辛かった時期がありましたね。お金とかじゃなくて何か一緒に作っていける人と仕事をしたかったんだなっていうのがここ最近分かりました。その点、園長は対等に喋ってくれたから僕はとても話がしやすかったです。

福森:僕は音楽のことわからないから、ottoのギターのチューニングなんてゼロでしょう。音も合ってなくて太鼓の張りも悪いわけ。それもわかってはいるんだよ。たまに手入れはするけど、プロに比べたら音は全部あってない。そこをプロの野間さんが指摘してくるかっていったら何にも言わないでしょ。音がかすれてるよねって言ったら「そこがottoじゃないんですか」とかちらっというんだよ。普通のPAの人はそんなこと絶対に言わない。「ガサガサのまま行きましょうか」とか、とってもやりやすかったです。

野間:だって園長は音楽の中で言いたいことがはっきりしてるじゃないですか。僕はライブを見た時に一発でそれがわかった。なんでotto&orabuってものが必要なのかってすっごい考えた時もあるんですよ。学校教育で定形を教えること、これがほんとに意味がある事なのかとか。うちは上の娘が学校行ってないんですよ。僕も高校の時から学校を離脱してるんですよ。でもそのおかげで枠の外でしか考えてないから、枠のなかで話をする人が多いなっていう感じはしてて。ダメだったら終わりじゃなくて、ダメならどうしたらいいかを考えないんだなって。たぶん学校教育のなかでみんな固められちゃったんだなっていうのがちょっとあるんですよ。娘が2年生くらいのときからなんか学校に行きたがらなくて、無理やりは行かせたくないから、今5年生なんですけど1回も行ってないです。でも僕はそれでいいと思っています。そのなかで家で勉強させたりとか、なにが本当にやりたいかっていうのをバンバン伸ばさないといけないと思うんです。

福森:学校には文部科学省が定めた規定に従って教育をするというマニュアルがあるわけだけど、そこからズレてもいいじゃないかって僕は思うんだよね。学校の先生たちは到底言えないけど。ましてやこの福祉の業界は民間でありながらも、結構みんな先生みたいなんだよね。指導・訓練をして社会に出していくという考えが圧倒的に多い。

野間:otto&orabuは障害を持ってる方の良い癖だったり、音楽的には一般的に悪いって言われるようなことをブランディングしてるじゃないですか。それって障害を持ってる方だけじゃないと思っています。一般の人も絶対そうなんですよ。そんな自分らしさを持っている人を音楽を通していっぱい作りたいんですよね。みんな間違いじゃないから。

福森:有名じゃなくても上手じゃなくても良くて、そういう気持ちを大切にしているというのは意外でした。メジャーなものを東京から持ってきて何かするのかと。

野間:鹿児島ですからね。東京に住んでるわけじゃないので。やっぱり鹿児島の空気の流れと温度感に合う何かをしないと。

福森:人が好きなんだね。そのスピリットで続けていってほしいですね。

野間:人に助けられていますから。疲れている人が多いので救いたい気持ちもありますね。音楽って非日常のエンターテイメントじゃないですか。楽しい気持ちで明日を迎えて欲しいですね。それにしてもotto&orabuには嘘が無いんですよね。かっこつけられないし、どんなライブになるかもわからない。いつもやりたいショーができるかもわかんないじゃないですか。利用者さんがどんなテンションかもわかんないし。いつもライブする時はこの時間帯大丈夫かな、ストレスじゃないかな、いちばんいいピークでステージに立ってくれるかなっていつも思っています。衣装着替えてるときとか実は外からずっと見ています。でもそこからPAが始まってるんですよ。それがやっぱりotto&orabuの良さ。ありのままで。それでいいんじゃないかなと思っています。人間らしいじゃないですか。僕たちはそんな自然体の姿を自分で抑えつけちゃってると思うんです。それぞれがオリジナルでいいのに、今はそれを出しにくい環境にあるかなって僕は思っています。

福森:ライブの控室でも今日の演奏どうしようかって利用者は一つも言わないですよ。お茶やおかしを取り合ったりだとか、冗談を言ってばかり。県外に一泊二日とかで行ってもライブの事はずっとしゃべらなくて、そんなことより明日はどこに行くのか何を食べるのかとかそんな話をしてます。

野間:すごいですよね。それであのライブができるわけですからね。

福森:今度、もうひとつの美術館主催の「ありのままがあるところ展」のスペシャル企画として配信ライブを予定しています。ミニottoとotto&orabuの演奏を予定しています。(※3)そちらのPAもお願いします。

野間:どんな内容になるんですか。

福森:ミニottoプラスotto&orabuという構成。ミニottoっていうのを6人でやってます。職員は僕とキーボードの2人だけ。利用者4人。楽器はキーボードに加えてコントラバスとマリンバとバンブーとドラムだけのアコースティックな構成で。最初はどうなるかと思ったけど、めっちゃおもしろいですよ。後半はottoのフルメンバーとorabuも入ってきて1時間くらいかな。でもまだまだ成立し過ぎかもしれない。もっともっと自然にズレてていんじゃないかと思ってるんだけどやっぱりズレるのは怖いんだよね。久しぶりのライブで自信ありませんが、今日は野間さんに励まされました。

野間:ottoも進化してるんですね。みなさんがステージで楽しければ最高ですよ。僕はそれを増幅する役目ですから。

※1)2010年より鹿児島県南九州市川辺町にある廃校で開催されている音楽フェス。今年で12回目を迎える。

※2)2013.11発売のアルバム「youth(青春)」にしょうぶ学園濵田幹雄さんの絵画が使用されている。

※3)orabuの出演は感染症対策のため中止となりました。

季刊誌102号『人』ページより掲載(季刊誌購読方法はこちらへ

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野間太一氏プロフィール

2002年、東北ライブハウス大作戦をたちあげた「西片明人」が主宰するライブサウンドエンジニアチーム「SPC」に参加。「BRAHMAN」「Hi-STANDARD」を始め数々の専属オペレーターをつとめる。2011年1月1日に地元鹿児島に帰省。同年8月に「WALK INN STUDIO!」を設立。2014年から「僕らの街は、僕らで創る」をテーマに「WALK INN FES!」を桜島で開催。野間のプロデュースにより音楽のみならず文化を通して参加交流できる新しい地方フェスとして注目を集めている。今もサウンドエンジニアとして世界中のライブハウス、フェスで活躍する。

◆オペレーター参加した主なフェス:「FUJI ROCK FESTIVAL」「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」ほか多数