2021.08.13 UP DATE
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角屋敷まり子(自然食品の店やさい村 代表)

福森伸(しょうぶ学園統括施設長)

創業30年目の自然食品の店「やさい村」の代表角屋敷まり子氏。マクロビオティック料理教室を各地で開催しています。しょうぶ学園には、園内のクッキングスタジオやホールで教室や講演会を開催するなど、定期的にお越し頂いていますが、施設長の福森とじっくり話すのは今回が初めて。「食」について、しょうぶ学園について、感じていることを語り合いました。

福森:本日は、「やさい村」主催の角屋敷さんに来てもらいました。マクロビオティックの正しい理解を一般人がしやすいように教えてもらっていいですか。

角屋敷:基本は「穀物菜食」です。

福森:「穀物菜食」って?

角屋敷:玄米菜食って言うでしょ。だけど玄米だけじゃなくて大豆や小豆、豆腐など植物性タンパク質などを中心にした食事です。肉や魚は食べたらいけないわけじゃないけどお野菜を中心に。あとは白砂糖とか乳製品は使わない。そうしたら免疫力が上がるんです。自然食のお店「やさい村」をオープンした当初、県内各地からお客さんがいらっしゃって、マクロビオティックで元気になったっていう人達ばっかりだったんですよ。脳腫瘍が良くなったとか、結石が消えたとか。マクロビオティックの講座をしょうぶ学園で最初にさせてもらったとき、すごい人数がきてましたよね。そのとき全世界ですごい流行っていたんです。もともと日本の考え方で食養からきてるのでそれが逆輸入のような形になりました。

福森:逆輸入になったんですね。

角屋敷:創始者と言われる桜沢先生が体系化したんです。

福森:それはいつぐらいの話ですか?

角屋敷:昭和初期です。戦後、食べ物が無くなってしまって。マクロビオティックは、お醤油なら、丸大豆で作った本醸造の本来の作り方をしたものを使いますが、その時代は食べ物がなかったから、簡単に熟成させて人工甘味料なども入ったものを使っていました。でも、本来の作り方で作られたものが食べたい。そこで、そういうものを販売するため自然食品のメーカーさんができました。私、玄米食には肉とか魚が合わないと感じています。玄米を食べていると、肉とかあんまりおいしく感じられなくて、そんなに食べたくなくなってしまう。すごい不思議だったんですよ。なんで合わないのかなって。玄米はそれだけで完全栄養食って言われるくらいだから、別に他のものを必要としてないのかなって思っていました。調べてみたら玄米の油にはガンマオリザノールっていう成分が含まれてて、美味しさや幸福感を刺激するんですよ。そんなに余計な物を食べなくて済むってことになるらしいですよ。おもしろいじゃないですか。逆に動物性脂肪を取ると、もっと取りたくなるそうです。

福森:それは、一般的に言われたりしますね。肉食の人たちって攻撃的になりやすいだとか、それは一理あって証明されているってわけだよね。

角屋敷:こんな実験があったそうです。マウスに普通のご飯をたべさせたのと、ジャンクフードみたいなのを食べさせたのとを、1週間くらい断食させて、そしてそれぞれがどういう食べ物を選ぶのかっていうのをしたらしいの。そしたら普通の餌を食べていたマウスはちゃんと炭水化物の餌を食べるんですよ。低血糖になってるから米を食べないと体に良くない。それでちゃんと取るんです。でも、動物性の油を取った方は動物性脂肪の入ってるものを選んでしまうんです。だから、動物性の油を取りすぎると本来人が何を食べるべきなのか、食べないといけないものがわからなくなるんですって。

福森:いろんなものを食べて迷うんだろうね。体も。

角屋敷:それを聞いてああなるほど!ってすごく納得して。玄米を食べるとそんなにたくさん食べようとも思わないし、足るを知る人になるんですよ。

福森:ちょっと聞きたいんだけど、お酒はどうなの。

角屋敷:(笑)私に聞きます?

福森:いいわけないじゃんって言われそう。

角屋敷:いや、違いますよ。私も好きですよ。人はね必ず何か陰性のものが好きですよ。陰性って体を冷やす、緩める、リラックスする。人は動物だから動くので陽性だから、ちょっと陰性の物がみんな好きですよ。アルコールが好きだったり、コーヒーや甘いものが好きだったり。アルコールが悪いというよりは飲む量じゃないですか。

福森:焼酎はどうですかね。

角屋敷:蒸留酒だから、焼酎は良いと思うけど。だけどその飲む量じゃないですか。(笑)

福森:量ですね。やっぱり自分の調子が悪い時は少なく食べるのが普通でしょ。

角屋敷:自律神経が失調すると、異常食欲が出るんです。風邪の引き始めの一番の症状は変な食欲です。腸には自律神経がいっぱいあるんです。自律神経には交感神経と副交感神経があります。交感神経って緊張した時に優位に働いて、副交感神経が寝る時とかリラックスした時に優位に働くんだけど、緊張状態にあると、交感神経が働いてるわけでしょう。

福森:リラックスしたくて副交感神経を働かせようとする。

角屋敷:食べたときに副交感神経が働いてリラックスするから、食べちゃう。さっき食べたばっかりでおなかはいっぱいだというのにまた食べちゃう。健康な時にはそんなに食べたいと思わないけど、緊張状態にあったり、体調が悪い時って食べてしまうじゃないですか。交感神経が働いているから、食べてリラックスするの。でもそれは食べた時だけ。だからまた食べる。

福森:食べて安心感を得る。得ようとして食べるんだけどまた足りなくなる。でまた食べる。

角屋敷:足りなくなるっていうか、緊張状態はまだ継続していてリラックスするのは食べた時だけだから。それで食べすぎたら消化できなくて腸内で悪玉菌が増えちゃって、おなかのなかの調子が悪くなって体調も悪くなってしまう。

福森:ストレスがたまった人は食べ過ぎるってよく聞くけど。

角屋敷:それだと思います。ストレスがたまるとリラックスするために食べる。

福森:マクロビオティックの考え方は人間性とか哲学的な話に繋がっているように思います。

角屋敷:陰陽五行という中国の考え方があります。胃が弱ると思い悩むとか、ストレスがたまると肝臓にきますね。忙しくてストレスがたまっていると、同じことが起きたとしても聞き流せる時もあれば、妙に腹が立つときもあるでしょ。それはあなたが悪いんじゃなくて内臓が弱ってるんだよって。

福森:逆なんですね。僕は思い悩んでるから内臓が弱ると思ってました。

角屋敷:それもあります。

福森:胃が痛いからその場しのぎに薬を飲んだりして。このくらいの年になると自分の内部がだんだんわかるよね。痛い時には自分の力で治すって強く思っていると免疫が出てくる感じがします。

角屋敷:体にいい薬なんてひとつもないんだよって聞いたことがあって。あ、そうなんだなと。むやみに使えないなと思いました。じゃあどうしようかっていうので、免疫力をつけるしかないと。

福森:そのあたり、昔から敏感だったんだ。

角屋敷:なのかも。

福森:心も体もつながっていると納得できる話ばかりでしたね。ところで、しょうぶ学園で料理教室をはじめてしばらく経ちますね。園生とも仲良くなったでしょ。それまでは障害者ってそんなに接する機会なかったんじゃないですか。

角屋敷:なかったです。

福森:でも今は前からいるみたいにフレンドリーだよね。

角屋敷:(笑)そうです。ほんとに最初の最初は、どう接していいか良く分からなかった。園生の皆さんも、私に対して知らない人っていうか遠慮もしてて。だけど今はすごく仲良くなったので「やあ」みたいな感じ。「おはよう」って挨拶して。いろんな方が荷物を運ぶのを手伝ったりしてくれて、コミュニケーションも多くなってて受け入れられた気がします。今はてっちゃんが来てくれますよ。初めはしゃべらなかったですけどね。いつも何月何日何曜日、名前とかが書いてあるのを見せてくれてたんですよ。でもそれをどうしたらいいのか分からなくて、そしたら読んだらいいんだよって聞いたから読んであげたら納得してたの。そしたらある日から「ねーこ」って言うようになりました。それ以来「ねーこ」って猫のグッズをいつも見せてくれるの。でね、私が一度、自分の家の猫を携帯で見せてあげたら「わー!」って喜んで、大きな声で。(笑)

福森:口数の少ない彼が相当リラックスしてますね。信頼関係ができてる。そういうことですよ。「ねこ」って文字を15年くらいずっと刺繍してたんですよ。利用者ともコミュニケーションが取れ、友達になり良い関係を築いてもらってありがとうございます。

角屋敷:嬉しいです。いろいろ教えてもらっておもしろかったですありがとうございました。

福森:こちらこそ、色々教えてもらいましたよ。先ほど地元の1歳先輩という事が分かりましたね。ありがとうございました。

角屋敷:そうでした。吉野中学校のね。いやー知らなかった。(笑)これからもよろしくお願いします。

季刊誌101号『人』ページより掲載(季刊誌購読方法はこちらへ

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角屋敷まり子
1992年に鹿児島市吉野町に自然食品の店「やさい村」をオープン。食べるものだけではなく食べ方も健康に深く関わり合っていることを知り、マクロビオティック(正食)を学ぶ。大阪の正食協会でマクロビオティック料理を学び、師範を卒業。正食協会福岡教室を担当後、料理講師となる。現在、鹿児島市、志布志市、水俣市で定期的にマクロビオティック料理を指導している。また、料理教室のほかに、保育園や学校などで食と体について講演も行なっている。