2020.05.18 UP DATE
TALK SPOT 90

パンデミック 〜大流行〜

みんな忘れたのだろうか?
アンパンを分け合うことは小学校で先生から習ったこと。「ここに、アンパンが二つあります。二人がお腹をすかせていたら一つずつ分けましょう。三人の人がいたら、二つのパンをそれぞれ三つに分けて二つずつ分けましょう。」と。
コロナウイルス問題で政府の対応も一貫性がないから、不安感の増大、感染者への差別、物資の独占等、メディアは事実の報道に混じって、人々の不安感と恐怖心を掻き立てるような根拠なきうわさや憶測をもたらしているのも事実だ。そのような情報が個人の想像を駆り立て、コロナより人間の行動や心理を汚染していく。本当は自分さえ良ければという気持ちからではないのだが、次第に自分が危ないから、その恐怖から逃れるために他人のことを考えることができなくなる。いつもは困ってる人を助けたいのに、自分の危機感が優先するからみんなが自分を守ろうとする。恐怖に煽られれば煽られるほど、人間の本能である生存欲求は増長され利己的な言動や行動が現れてくる。小さなコンフリクト(衝突、矛盾、対立、緊張、葛藤等)によって、自己防衛のために相手を憎んでもないのに攻撃的になったり、差別を引き起こすことになる。それが集団的になると経済を中心にした社会システムが脆くも崩れていくことは、集団の連鎖の実に恐ろしいところだ。
元来、人の愚かさ、社会の弱さは否定できない。正しい判断とその根拠がメディアと政府の説明に信頼が持てるように重要なことを共有する必要がある。理性という言葉は自分では普段あまり使わないが、今こそ理性あるリーダーシップが求められている。いわゆる、「リスクコミュニケーション」である。リスクコミュニケーションとは、地域や広域の危機的状況に関して行政やメディア・専門家などで情報の一方的な発信だけでなく、市民との対話や意見交換(コミュニケーション)を通じて意思の疎通をすることである。一般的に情報の主たる発信者は、政府やメディアが担っている傾向があるが、理想的には一方的な情報の発信や受信だけではなく明確な決断力と市民との信頼関係が重要になってくる。正に「今どう行動すべきか」とどのようにリスクに向き合い対処していくかが問われているのだ。我々福祉施設や企業も然り。健康安全に関する全般における基本事項ではあるが、特に目に見えない感染症においては信頼が特に求められるところであり、経営者とスタッフが意見交換し、共有した方針を確実に実行するというチームを再確認するときでもある。それがリスクコミュニケーションの目的なのである。
人類は今、全員が弱者となっている。優先すべきは、コロナウイルスに感染している人はもちろんだが、感染していない重篤な健康状態におかれている医療物資や介護者が不足している人々の支援であろう。私たちにできることは、種族の存続のために人を排除することではなく、逆に精神的に強く繋がりあうことではないかと。大げさかもしれないが、社会システムの弱点を露呈している今だからこそ、人間本来の分かち合う素晴らしい行動が地球を再生させるチャンスかもしれないと考えるのは危機意識が薄いからだろうか。基本的な自分の行動に責任を持って慌てず現実にしっかりと向き合える、信頼できる「自助・互助・共助・公助」という助け合いの小さなグループがあちこちに誕生し、その精神がそれこそ大流行することはないのだろうか。

季刊誌96号『TALK SPOT』ページより掲載(季刊誌購読方法はこちらへ

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パンデミック 〜大流行〜
フクモリ シン